今回は、チーズについてお話いたします。
私は、フランスチーズ鑑評騎士の会より(シュバリエ)の叙任を受けております。
フランスチーズなどの主にヨーロッパの食文化に精通し著名な活動や食文化の普及に功績のある者、或いは一定の知識や技能を有する者に対して授与される 騎士の称号です。歯科医の立場から、ぜひチーズを普及させたいと思っております。
さて、歯科とどのような関わりがあるのでしょうか。
最近沢山の種類のナチュラルチーズが手に入るようになりましたね。青カビ、白カビ、ウォッシュ、など。プロセスチーズとの違いは、ナチュラルチーズを粉砕し加熱、溶融し乳化したもの。いわゆる加工したものがプロセスチーズです。
チーズは、牛乳から水分(乳清)を取り除いて作られます。ですから牛乳と同様、栄養バランスのよい理想的な食品ということができます。
チーズはたんぱく質と脂肪が主な成分で、カルシウム、ビタミンA、ビタミンB2も豊富です。チーズに含まれるカルシウムは、他の食品に比べ、たいへん消化吸収されやすくなっています。必要な摂取量は平均一日600㎎と言われていますが、プロセスチーズは、一切れ(20g)食べると一日のカルシウム所要量の約5分の一になります。
甘いものを飲食すると歯に付着した歯こう(プラーク)の中の細菌もその糖分を代謝して酸を生産します。この酸が歯のミネラル成分を溶解します。これを ”脱灰”と言います。
脱灰がたび重なるとやがて穴のあいた虫歯になります。けれども、虫歯は一方的に進むわけでなく、それを回復させる機能が身体に備わっています。穴が開く前の初期の虫歯は唾液中のカルシウムとリン酸が作用して元に回復します。この現象を”再石灰化”といい虫歯予防の基本メカニズムになっています。
チーズは唾液中にカルシウムを補給し、再石灰化のパワーを高めることが欧米の研究で確認されています。WHO(世界保健機構)も、虫歯の危険性を減らす食品のトップにハードチーズをあげています。
歯の隙間にチーズが残ると虫歯になるのではないかと思いがちですが、その隙間に残ったチーズが唾液や歯こうにカルシウムを持続的に補給し酸を中和しつつ再石灰化を促進してくれます。
チーズに多く含まれるリン酸カルシウムは、エナメル質の脱灰を減少させることから重要な因子と考えられまた。乳の主要タンパク質であるカゼインがエナメル質表面に吸着して保護することも示唆されています。カゼインがミュータンス菌の付着を抑制するとの報告もあります。
このように、チーズは虫歯予防およびエナメル質保護に効果があり、噛むことによる唾液分泌促進がプラークPHの低下を抑える効果があり、ドライマウスや、唾液腺の障害などで唾液が出にくい方に特にお勧めです。
最後にとっておきの情報をお伝えします。
チーズは脂肪が多いことから肥満のイメージを持ちがちですが、これは誤解です。
チーズをはじめ、乳・乳製品には肥満を抑制する効果がある事が多くの臨床研究で検証されています。
その有力な因子としてカルシウムが考えられます。カルシウムは、脂肪細胞内の脂肪代謝を抑制し、脂肪を分解を促進するとの仮説が立てられサプリメントとして摂取するより乳製品として同量摂取する方が肥満抑制効果が高いという結果を得ています。
さらにチーズが熟成する際に生産される抗酸化ペプチドが脂質代謝を促すアディポネクチン産生を促進しており、これらペプチドも肥満抑制に関与している可能性が示唆されています。
このようにチーズには、健康を維持したり、ダイエットの手助けになったり、虫歯予防になったり・・・ いろいろな効能がありますが、何よりも、食卓にチーズがあることによって豊かな気分になり、楽しい会話をもたらして幸せなを気分になるのが一番の効能だと思います。