歯周病とは
歯そのものを傷める虫歯と違い歯周病は、歯を支える周りの組織(歯周組織)また、歯を支えている骨(歯槽骨)が、徐々に溶けていく病気です。歯周病はこれまで中高年齢層に多く見られると言われていましたが、実状では30代前後で80%の方が発症しており、初期症状においては10代の若年齢層でも50%もの方にも見受けられます。 歯茎が腫れる、膿が出る、歯が動いてきた、お口がにおう、ねばねばする、冷たいものがしみる、しっかり咬めない、噛むとじわじわ痛むなどの症状があります。歯周病の進行具合はポケット検査(出血度テスト)で診査します。
原因は、口腔内に常住している細菌の中の特異的な細菌による混合感染と考えられています。細菌は、ブドウ糖などを栄養に繁殖し、歯の表面に歯垢(プラーク)を生成します。歯垢1mg中には2億ほどの細菌が存在すると言われております。それが唾液の中に含まれているカルシウムや細菌の老廃物などを取り込み、歯石となります。歯石は栄養分を多く含みデコボコがあるので更に細菌や歯垢が溜まりやすくなるため、接触している歯茎に炎症を起こします。これが歯周病の始まりです。
バイオフィルムとは
バイオフィルムとは、硬い物質と液体との境界に、微生物が層状の巣を作っている状態のことをいいます。歯も硬い物質で、唾液という液体におおわれていますので、その表面にバイオフィルムができやすいのです。一般的によく言われるプラークとは歯のバイオフィルムなのです。
バイオフィルム=プラークは、歯周病菌や虫歯菌をはじめとするさまざまな微生物が強固にくっつきあってできた巣です。歯周病の予防や治療のためには、このバイオフィルムを確実に取り除くことが必要ですが、バイオフィルムは菌をやっつける薬(抗菌剤、界面活性剤など)に対して抵抗性を持つため、薬だけでバイオフィルムのなかに住みついている微生物を完全に死滅させることは望めません。歯周病の治療では、薬は効果を高める手段として使われます。
本来は、バイオフィルムを取り除くために最も有効なのは、やはり歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスなどによる歯磨きです。歯ブラシでプラークをかきだすことによって、バイオフィルムを破壊・除去することができます。歯周病の予防、治療には、バイオフィルムを確実に取り除ける歯磨きが一番重要なのです。
出血度テスト(ポケット検査)
歯周病の進行具合を確認するのに出血度テストを行います。検査用器具で歯周ポケット部分を触れたときの出血を確認します。
歯周ポケットは通常3mmぐらいですが進行すると5mm以上にもなります。
歯周病の進行
歯周病は自覚症状のないまま下記のように進行していきます。歯磨きの時に出血があるなど、多少でも違和感があれば、お早めにご相談ください。
健康な歯周組織
歯周病は歯肉溝からはじまります。不十分なブラッシングで歯肉の上にプラークが溜まったままの状態が続くと、歯肉が炎症を起こし歯肉炎になります。
歯肉炎
歯肉溝にプラークがたまり、歯肉が炎症で腫れて、歯肉ポケットになりました。まだ歯根膜や歯槽骨は破壊されていません。
軽度歯周炎
歯周病菌が歯周組織に侵入し、歯槽骨や歯根膜も破壊されはじめました。ポケットが内部に向かって深くなり、歯周ポケットになっています。プラークや黒っぽい歯石が歯周ポケットに溜まっています。
中等度歯周炎
炎症がさらに拡大して歯槽骨も歯の根の長さの半分近くまで破壊され、歯がぐらつき始めました。歯周ポケットもさらに深くなっています。
重度歯周炎
歯槽骨が歯の根の長さの半分以上破壊され、歯はグラグラです。
歯周病と全身疾患の関係性について
お口の中の環境が悪くなるとう蝕(虫歯)や歯周病を引き起こします。それらの悪玉微生物が、のどから気管、そして肺にまで入り込んだり、歯茎の中の血管にもぐり込んで、血液とともに全身の臓器へ運ばれていったりすることがあります。
実は、歯周病が心臓病(心内膜炎、狭心症、心筋梗塞)や脳卒中、肺炎などの全身の病気の発症と関係があることがわかってきました。日本人の死亡原因の2位は心疾患、3位は脳血管疾患、4位は肺炎ですがこれらと歯周病は密接に関連しているのです。また最近、一部のがんとの関係も疑われるようになっています。その他、歯周病は糖尿病のコントロールへ悪影響を及ぼしたり、早産や低体重児出産(きちんと産まれても体重が軽い子供)の原因とも深い関係があることがわかってきています。上記のような疾患にならないためにも、日常の歯磨きをはじめとした適切な生活習慣で歯周病の予防をしていくことがとても大切です。
【食生活】
食生活は歯周病予防の大きな要因の1つです。食事による“噛む“という行為はただ食物を消化しやすくするというだけではなく、歯茎の血行を促進し、そのことで分泌される唾液によって口の中を浄化するといった流れにより口の中を丈夫で清潔にし、歯周病を防ぐ事に繋がります。普段からなるべく固い物を食し、よく噛むということを意識するのが大切です。
【噛み合わせ】
噛み合わせが悪いと歯に余計な力が加わり歯のセメント質が傷つきます。そこから歯周病が発生し、さらに歯槽骨の吸収が始まり、歯がぐらつきます。歯がぐらつくと、噛み合わせが悪くなる…といった悪循環を引き起こします。その他の弊害にも繋がる可能性があるので、早めの治療をお勧めします。
【定期検診】
食生活の中だけではなく“喫煙“や“睡眠不足“、“ストレス“なども歯茎の健康を低下させるため、歯周病の原因になります。歯周病が進行すると“糖尿病“や“心臓疾患“など身体にも影響を及ぼす恐れがあります。健康な体を維持するために2~3か月に一度の定期検診が大切です。
歯周治療とは
歯周病を治す薬はありません。症状を抑えることはできても、それでは根本的な治療をしていることにはなりません。患者様にはより効果的なプラークコントロールを身につけていただきます。さらに歯茎の深いところについている歯石を機械とレーザーで取っていきます。だいたい初期の歯周病であれば改善できます。もっと重症な歯周病の場合、外科手術となります。
代表的な治療方法
ブラッシング
歯周病の原因は歯垢です。それをためない、増やさないことが基本です。その為にはまず正しい歯ブラシの方法を身に付け毎日実行することが大切になります。
初期の歯周病の治療…スケーリング
歯石は歯肉内部の浅い部分に付着しています。そこに超音波スケーラーやハンドスケーラーなどを挿入し、歯石やバイオフィルムなどを取り除きます。麻酔は使用しません。
初期~中期の歯周療…スケーリング、ルートプレーニング
麻酔を使用し、歯肉の少し深い位置にある、スケーリングでは取りきれない歯石やバイオフィルムを取り除きます。
中期~末期の歯周病…フラップ手術
麻酔を使用して歯の周囲の歯肉を切開し、プラークや歯石を取り除きます。
重度の歯周病…歯周組織再生治療
以前では、歯周病になると歯を抜いて義歯という治療が一般的でした。しかし、現在では歯周病の原因と予防法が解明され、一度失ってしまった骨も、歯周外科最新治療であるGTR・GBR法等の治療を行うことにより骨を再生させることが可能になりました。詳細は次の項目で説明いたします。
歯周組織再生療法とは
1.GBR法
GBRは歯周組織再生法の1つであるGTR(Guided Tissue Regeneration)と同様に人工の膜を用いて骨再生のスペースをつくる方法で、中に移植骨、骨代替材、PRP等の誘導因子などを封入して骨の強度や密度を向上させる方法。昔から行なわれている自家骨移植は現在も臨床的に有効な方法で、骨増量法のゴールデンスタンダードと言われています。しかし、骨を採取するためには手術部位以外への侵襲と採取できる骨の量に限界があることが問題となります。そこで、人工骨研究が進み種々の形状のハイドロキシアパタイトやβ-TCP、α-TCP、バイオス(Bio-Oss)、ピュロス(DBM Puros)などが骨代替材として使用され効果をあげています。
Step1ダッペングラスなどに顆粒を移します。
Step2患者様から採血した血液を顆粒に適量加えます。
Step3顆粒と血液を均一に混ぜます。
Step4骨の量が不足した部位などに適量を補填します。
2.GTR法(歯周組織再生誘導法)
(Guided・Tissue Regeneration technique)歯根の周囲の骨の吸収した部分位に骨の再生を促すために、テトロン製の薄い膜を使います。歯根の周りに穴が開いているような骨の吸収部位を膜でふたをして、膜の内側に骨の再生を期待します。使用する膜は吸収性膜と非吸収性膜がありますが、歯周病の病態も考慮して選択します。
歯周炎になると結合組織が失われます。
メンブレンにより、新付着形成能のある歯根膜組織にスペースを提供します。
新付着には線維結合を伴う新生セメント質の形成が見られます。
組織再生用吸収メンブレンと非吸収メンブレン
歯周病によって失われた歯と歯の周りの組織の付着を再生させるという治療法です。吸収性と非吸収性の膜があります。
3.バイオリジェネレーション法(エムドゲインなどの薬剤を使用する方法です)
エムドゲインの主成分は子どもの頃、歯が生えてくる時に重要な働きをするたんぱく質の一種です。歯周組織をきれいにした後、エムドゲインなどを歯の根に塗ることにより歯の発生過程に似た環境を再現します。この結果、歯や歯周組織を再生させます。
バイオリジェネレーション法の流れ
Step1歯肉の切開をします。
Step2歯肉を剥離します。
Step3局所麻酔後、切開、軟組織を剥離し歯根面の徹底清掃をします。
Step4清掃した歯根面にエムドゲインゲル溶液を塗布します。
Step5縫合します。
4.リグロス(歯周組織再生療法)
リグロスとは、歯周組織の再生を促す効果のあるお薬の名前です。このリグロスを使って歯周組織再生手術を行うことにより、重度の歯周病によって失った組織を再生し、抜歯を回避できる可能性が高くなります。
歯周組織再生療法の注意事項
歯周組織再生療法を行えば、必ず骨が回復するというわけではありません。
歯周病が進行して骨の大部分が溶けてしまっているような場合には歯周組織再生療法を行っても骨の回復が望めない場合があります。
歯周病予防について
PDT療法
PDT療法は光線力学療法を利用したものです。患部にレーザーを照射し歯周病菌を破壊する歯周病治療です。歯科の代表的なPDT療法にはペリオウェイブというものがあります。PDT療法は、歯周病菌であるグラム陰性菌の細胞壁に対して毒性のある遊離基を発生させることができます。遊離基がグラム陰性菌を死滅させます。PDT療法はグラム陰性菌に対しては毒性がありますが、人体に対しては安全な物質です。痛みも発生しづらいため、毒素以外にはダメージを与えない非常に安全性の高い歯周病治療です。
プラークコントロールが大事!
プラークコントロールとは歯や歯茎に付着したプラーク(歯垢)を抑制、除去することをいいます。プラークは歯周病の進行だけでなく口臭の原因になったり、虫歯菌の増殖にも深く関わっています。プラークコントロールは歯を守るうえで大変重要な事です。
歯磨きが大事!
プラークは歯ブラシの入りにくい場所に溜まりやすいので、効率の良い磨き方でなければいつまでもプラークがとれないだけでなく歯の表面を傷つけてしまいます。歯科医院で皆様にあったブラッシング指導を受け、正しい知識で効率のよいブラッシングを覚えることが大切になります。また、定期的な歯科検診での歯のクリーニングや虫歯の早期発見もかかせません。
DDS療法・3DS法
手術ができない場合、スケーラーでポケット内をきれいにしたあと、先の細いシリンジで抗菌剤(塩酸ミノサイクリン)を送り込みます。歯周病菌が住みついている部分に直接投与するので効果的です。薬は長い時間効果が持続する徐放能を持っています(商品名:ペリオクリン、ペリオフィール)。
歯ブラシの効果を高める手段として、3DS(スリーディーエス)という方法も登場してきました。自分の歯ならびに合ったトレーに薬剤を入れて少しの間、歯にはめこむ方法です。
3DS法については下記をご覧ください。
歯周病に3DS(歯科薬剤到達システム)療法
歯型に合わせた樹脂製マウスピースの内側に抗菌剤を塗り、1日5分間歯にかぶせる方法です。歯周病にかかると、歯茎の腫れ、出血を伴う歯肉炎や歯を支える骨などの組織が破壊させる歯周炎が起こり、悪化すると歯を失うまでに至ります。歯の表面や歯茎のすき間で増殖する歯周菌が原因で成人の8割に症状があるとされています。
最近の研究では、歯周病菌は血管に入り込んで体内を巡り、糖尿病の悪化要因となることや、心筋梗塞の引き金になる可能性があることもわかってきました。歯周病菌が増殖すると、日常的な歯磨きでは除去できません。歯周病菌は本来、酸素に触れると死滅する弱い菌ですが、糖類などでできた無色のネバネバした膜(バイオフィルム)を形成し、その中で増殖します。
バイオフィルムは歯ブラシでは取れないため、歯科での専門な治療が欠かせません。細菌の死骸などが固まった歯石を除去した後、専門の器具で研磨剤を塗った歯の表面を磨き、バイオフィルムを除去します。この研磨の操作は「PMTC(歯面清掃)」と呼ばれます。
しかしそれでも取りきれない歯周病菌もあります。この歯周病菌を徹底的にとる方法が3DS(ドラックデリバリーシステム)です。マウスピースの内側に抗菌剤を塗ります。1日5分、歯にかぶせ、1週間続けるとPMTCで破損したバイオフィルムの間から薬が染み込み歯周病菌を退治できます。様々な種類がある歯周病菌のうち歯周病と密接に関係するのは4種類あります。抗菌剤を使っても菌を完全無くすことはできませんが、歯周病菌が口内の総菌数のそれぞれ0.1~0.2%程度であれば歯の健康を保てることが分かってきました。治療後は丁寧な歯磨きを心がけ数か月ごとに通院して磨き残し部分の清掃などを行うことで歯周病菌の増殖を抑えることができます。
PMTCと3DS、フォトダイナミックセラピー(PDT)を取り入れた治療は、当クリニックにおいて最大限に歯周病菌を減らす効果的な治療法だと思います。
PDT(フォトダイナミックセラピー)
PDTとはPhoto Dynamic Therapy(フォトダイナミックセラピー)の略で日本語では光線力学療法と言います。光線力学療法とは、生体内に光感受性物質(光増感剤)を注入し、標的となる生体組織にある波長の光を照射して光感受性物質から活性酸素を生じ、これによって癌や感染症などの病巣を治療する術式です。これを歯周治療に利用します。今までにない歯周病治療です。光によって活性化する薬品(光活性剤)を歯周病ポケット内部に注入し光を照射することによってこの薬品を活性化して除菌します。麻酔を行う必要性がありませんし、1歯約1分で終了(除菌)可能です。抗菌療法(抗生物質の内服による歯周病治療)と違い、抗生物質を服用しないため、耐性菌のリスクが少なく、より生体に優しい治療法と言えます。
今までの歯周病治療との違い
それではこのPDTは今までの歯周病治療と何が違うのでしょうか?
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)により歯石等の感染物質を取り除く際に歯周病細菌が歯周ポケット内部に散らばって残ってしまうことがあります。SRPを行うことによって歯石(汚れ)は結構取れますがすべて(100%)取れません。砕かれた歯石の削片や目で見えない細菌等は残る可能性がありますし、大量の細菌が残るとそれが元になり歯周病が再発することがあります。また、重度歯周病の場合、歯周ポケット内部には大量の歯周病細菌が生息しています。この細菌が腫れや、出血の原因となっているだけでなく、骨が吸収を起こします。歯周病細菌を減らすことが歯周病を治す第一歩なのです。
今までの歯周病治療では効果が確実に期待できない症例があったり(細菌除去が不確実な症例)、抗生剤を使用した歯周病治療は副作用の問題(薬剤耐性)が起こることがありました。すなわち、薬剤が効かなかったり、効きにくくなるなどの現象が起こることがあります。PDTはそうしたことがまったく起こらない歯周病治療なのです。
まず使用するバイオジェルですが、0.01%のメチレンブルー色素を中性リン酸緩衝液で、この色素は歯周病細菌に得意的に結合します。このバイオジェルは光感受性物質と言い、光を吸着すると化学反応が起こり活性酸素を発生させることができます。
光エネルギー(Periowave)を照射この時に使用する光エネルギーは「Periowave」という装置を使用します。「Periowave」は670nmの波長で220mWの低出力光エネルギーです。発熱を起こすこともないため、痛みを感じることはありません。光エネルギー(Periowave)を照射することにより、色素(バイオジェル)が結合した歯周病細菌は破壊されます。このバイオジェル(色素)は人間の身体の細胞には結合しません。また、光が照射される1~2ミリが有効範囲であるため、その効果は限局的です。そのため、ピンポイントでバイオジェル(色素)を塗布し、光を照射することが可能です。
PDTの適応症
PDTの適応症はこのようになります。
歯周病治療と併用すると効果的
歯周病の治療と併用して行うことによって効果があります。歯周ポケット内部の感染物質(歯石等)を超音波スケーラー等で除去(クリーニング)してからPDTを行い、PDT終了後には必ず破壊された歯周病細菌および毒素を洗浄することが必要です。
メンテナンス(定期検査)で使用すると効果が持続します
当クリニックオリジナルのパーフェクトペリオメンテナンスコースで使用しています。PDTによってある程度の期間歯周病細菌の再発を抑えることが可能となりますので、メンテナンスにおいて歯周ポケットの再発した部位に使用することにより維持安定を得ることができます。どれくらいPDTの効果が持続するかということは様々な条件により大きく変わりますが、約1~2か月は維持可能となります。(PDTを使用すれば歯周病にならないということではありません。徹底した歯磨きができないと効果がありません)
再発しやすい歯周病に最適
歯周病は歯周病細菌による感染症です。歯周病細菌が多い方は再発率が高くなります。重度歯周病の方や再発率の高い人にはPDTは最適と言えます。
歯周病治療における菌血症の防止に
歯周治療における菌血症とは、汚れ(細菌)が歯周病治療(抜歯等の他の歯科治療でも起こります)を行うことにより、身体の中の(血管内)に細菌侵入することを言います。歯周ポケット内部(歯肉の内部)には当然のことですが、血管が存在します。特に歯周病で歯肉が腫れている方は出血が起こっていることが多いため、歯周ポケット内部に存在する汚れ(歯石)と血管が触れていることになります。こうした汚れ(細菌)が一時的に血管内部に侵入することを菌血症と言います。歯周病治療等の歯科治療を行うとこうした菌血症が起こることが報告されています。歯周病の基本的な治療であるルートプレーニングでは、報告に差がありますが、「8~79%の確率で菌血症が生じる!」と報告されています。 PDTをルートプレーニング前に行うことにより、歯周病細菌の減少をはかることが可能となるため、菌血症のリスクを減少できます。
細菌性心内膜炎、大動脈弁膜症、チアノーゼ性天性心疾患、人工弁、シャント術実施患者の方に有効
このような疾患の患者様は菌血症をおこす可能性が高いためPDTは有効と言えます。
インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)に有効
インプラントは虫歯になりませんが、歯周病のような状態にはなります。このような状態をインプラント周囲炎といいます。インプラント周囲炎はインプラントが使えなくなる最大の原因です。メンテナンスの際にPDTを使用し、細菌の減少を行うことも有効ですし、もしインプラント周囲炎になってしまっても治療効果は高いです。
インプラント周囲炎(他院からの患者様)
歯周病治療(自費治療)の費用
治療項目 | 消費税別料金 | |
---|---|---|
GTR(エムドゲイン etc.) | 50,000円 | |
GBR(バイオス、ピュロス) | 50,000円 | |
フォトダイナミックセラピー(光線力学を使った歯周病ケア) | 1歯;2,500円 | |
ペリソルブ | 15,000円 | |
BioGaia(お口の中の細菌を清浄化するタブレット) | 30錠:3,000円 | |
プロデンティスリキッド 10ml | 1本:5,000円 |
※別途消費税を申し受けます。
歯周病Q&A
歯周病とはどういう病気ですか?
歯そのものを傷める虫歯と違い歯周病は、歯を支える周りの組織(歯周組織)に起こる病気です。歯を支えている骨(歯槽骨)が、慢性的になくなる病気です。
どんな病状がありますか?
歯ぐきが腫れる、膿が出る、歯が動いてきた、お口がにおう、ねばねばする、冷たいものがしみる、しっかり咬めない。咬むとじわじわ痛むなどの症状があります。
歯周病は全身に影響すると聞いたのですが?
お口の中の歯周病菌と歯周病で生まれてきた成分が体内に広がって全身の病気を誘発します。 私たちのお口の中には健康な人の場合でも約300種類数、数にして2億個とも言われる微生物がいて周りの環境に応じて悪玉になったり善玉になったりしています。悪玉微生物が口の中に増えて虫歯、歯周病を引き起こします。
それらの悪玉微生物がのどから 気管支、そして肺に入り込んだり歯茎の中の血管にもぐり込んで血液とともに全身の臓器へ運ばれて いったりすることがあります。
さらに歯茎の炎症のある場所で作られた成分(ケミカルメディエーター)も同じように全身に散らばります。そしてこれらが全身の病気を誘発し死に至ることもあります。 そのように歯周病は全身と関わっています。
歯周病にはどんな治療法がありますか?
最初に原因となっている歯石をとります。患者さんにはより効果的なプラークコントロールを身につけて頂きます。さらに歯茎の深いところについている歯石を機械とレーザーで取っていきます。だいたい初期の歯周病であれば改善できます。もっと重症な歯周病の場合、外科手術となります。
以前では、歯周病になると歯を抜いて入れ歯という治療が一般的でした。しかし、現在では歯周病の原因と予防法が解明され、一度失ってしまった骨も、歯周病最新治療であるGTR法やGBR法等の治療を行うことにより骨を再生させることが可能になりました。
(1)GTR法(歯周組織再生誘導法)
(Guided・Tissue Regeneration technique)歯根の周囲の骨の吸収した部分位に骨の再生を促すために、テトロン製の薄い膜を使います。歯根の周りに穴が開いているような骨の吸収部位を膜でふたをして、膜の内側に骨の再生を期待します。使用する膜は吸収性膜と非吸収性膜がありますが、歯周病の病態も考慮して選択します。保険適用です。
(A)組織再生用吸収メンブレンと非吸収メンブレン
歯周病によって失われた歯と歯の周りの組織の付着を再生させるという治療法です。生体吸収性の膜を使う事で、膜を摘出する為の2次手術から解放されました。
(B)エムドゲイン法(歯周組織再生誘導材料:EMDOGAIN)
エムドゲインの主成分は子どもの頃、歯が生えてくる時に重要な働きをするたんぱく質の一種です。組織をきれいにした後、これを歯の根に塗ることにより歯の発生過程に似た環境を再現します。この結果、歯や歯周組織を再生させます。
(2)GBR法
GBRは歯周組織再生法の1つであるGTR(Guided Tissue Regeneration)と同様に人工の膜を用いて骨再生のスペースをつくる方法で、中に移植骨、骨代替材、PRP等の誘導因子などを封入して骨の強度や密度を向上させる方法。
昔から行なわれている自家骨移植は現在も臨床的に有効な方法で、骨増量法のゴールデンスタンダードと言われています。しかし、骨の採取するためには手術部位以外への侵襲と採取できる骨の量に限界があることが問題となります。
そこで、バイオス(Bio‐Oss)、ピュロス(DBM Puros)などが骨代替材として使用され効果をあげています。
(3)DDS療法
近年医学領域において、抗癌剤などの薬剤を生体内局所で徐々に放出させるドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発が進められています。抗菌剤配合徐放性歯周ポケット挿入剤が、治療、予防に有効です。
・テトラサイクリン系抗菌剤
・ニューキノロン系オフロキサシン製剤
・ニューキノロン系スパルフロキサシン製剤
(4)3DS療法
歯周病に3DS(歯科薬剤到達システム)療法
歯型に合わせた樹脂製マウスピースの内側に抗菌剤を塗り、1日5分間歯にかぶせる方法です。歯周病にかかると、歯茎の腫れ、出血を伴う歯肉炎や歯を支える骨などの組織が破壊させる歯周炎が起こり、悪化すると歯を失うまでに至ります。歯の表面や歯茎のすき間で増殖する歯周菌が原因で成人の8割に症状があるとされています。
最近の研究では、歯周病菌は血管に入り込んで体内を巡り、糖尿病の悪化要因や、心筋梗塞の引き金になる可能性があることもわかってきました。
歯周病菌が増殖すると、日常的な歯磨きでは除去できません。歯周病菌は本来、酸素に触れると死滅する弱い菌ですが、糖類などでできた無色のネバネバした膜(バイオフィルム)を形成し、その中で増殖します。 バイオフィルムは歯ブラシでは取れないため、歯科での専門な治療が欠かせません。細菌の死骸などが固まった歯石を除去した後、専門の器具で研磨剤を塗った歯の表面を磨き、バイオフィルムを除去します。この研磨の操作は「PMTC(歯面清掃)」と呼ばれます。
しかしそれでも取りきれない歯周病菌もあります。この歯周病菌を徹底的にとる方法が3DS(ドラックデリバリーシステム)です。
マウスピースの内側に抗菌剤を塗ります。1日5分、歯にかぶせ、1週間続けるとPMTCで破損したバイオフィルムの間から薬が染み込み歯周病菌を退治できます。
様々な種類がある歯周病菌のうち歯周病と密接に関係するのは4種類あります。抗菌剤を使っても菌を完全無くすことはできませんが、歯周病菌が口内の総菌数のそれぞれ0.1~0.2%程度であれば歯の健康を保てることが分かってきました。
治療後は丁寧な歯磨きを心がけ数か月ごとに通院して磨き残し部分の清掃などを行うことで歯周病菌の増殖を抑えることができます。
PMTCと3DS、フォトダイナミックセラピー(PDT)を取り入れた治療は、当クリニックにおいて最大限に歯周病菌を減らす効果的な治療法だと思います。